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アメリカザリガニは2023年6月から「条件付特定外来生物」として規制される
アメリカザリガニは、2023年6月から外来生物法の「条件付特定外来生物」として輸入・販売・放出などが禁止されます。
従来の外来生物法では、「特定外来生物」に指定されると輸入・販売・飼育・放出などが禁止されます。一方、アメリカザリガニやミシシッピアカミミガメは生態系への被害が大きいことはわかっていたものの飼育個体数が多いため、指定時の野外放出が懸念され指定が見送られてきた経緯があります。
2022年に外来生物法の一部改正が成立し、特定外来生物に指定された生物のうち、通常の特定外来生物の規制の一部を、当分の間、適用除外とする例外規定を設けられるようになりました。アメリカザリガニとミシシッピアカミミガメを念頭においたもので、飼育・無償譲渡に例外を設けることで、飼育個体の放出を避ける狙いがあります。
アメリカザリガニを「条件付特定外来生物」として規制する内容の詳細については、以下の記事をご確認ください。
侵略的外来種アメリカザリガニ
アメリカザリガニは、2023年6月から外来生物法の「条件付特定外来生物」として法規制されます。アメリカザリガニは、生態系に被害を及ぼす侵略的外来種。アメリカザリガニが侵入した場所では、在来種の種と数ともに激減することが知られています。
当然、アメリカザリガニの法規制が検討されてきましたが、規制時に飼育個体が大量遺棄される社会的混乱が懸念され、指定が見送られてきました。ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)も、同じ理由で法規制が見送られ、今回アメリカザリガニと同時指定されます。
ちなみに、アメリカザリガニを除くすべての外来ザリガニが2021年11月2日から特定外来生物入りしています。これらはミステリークレイフィッシュと呼ばれる、1匹でも繁殖できる単為生殖という性質を持つため、先行して指定されたものです。
アメリカザリガニと特定外来生物
侵略的外来種を規制する法律・制度として、外来生物法「特定外来生物」があります。特定外来生物に指定された種では、以下の行為が禁止され、懲役または罰金の刑罰が課されます。
- 飼育・栽培・保管・運搬
- 輸入
- 譲渡し(販売・譲受けも含む)
- 放出
侵略的外来種の数を減らすには、輸入や売買、飼育個体が野外に放出される数を減らすことで蛇口を締め、次に野外にいるものを駆除していきます。
アメリカザリガニは、2020年時点で約65万世帯、約540万個体が飼育されていると推定されています。特定外来生物では飼育・譲渡も禁止されるため、指定時にこれらが野外に放出され、生態系に被害を及ぼすことが予想されています。
これを避けるため2022年、指定種について趣味の飼育や個人間無償譲渡はOKとする除外規定を設けられる外来生物法の一部改正が成立しています。
アメリカザリガニは飼育禁止になる?
繰り返しになりますが、アメリカザリガニは飼育禁止になりません。飼育禁止になったと勘違いして野外に放出しないようにしてください。アメリカザリガニは、個人の趣味飼育可の新制度で2023年から規制されます。
アメリカザリガニが飼育禁止にならないのは、規制種への指定時に大量遺棄が起きるのを避けることが主目的です。子どもがアメリカザリガニと触れ合う機会が残る点は、結果としてそういう側面もあるだけです。
ザリガニを駆除する方法
よほど小規模かつ閉鎖的な環境でない限り、アメリカザリガニを根絶する方法は確立されていません。根絶とは1匹もいなくなる、ということです。方法については、個別の根絶事例はあるものの汎用的な駆除方法の確立に至っていません。
ブラックバスなどの外来魚は池干しで根絶できますが、アメリカザリガニは歩いて移動したり穴を掘って潜るので、どうしても取り漏らしが出てしまいます。アメリカザリガニは一回に数百個の卵を持つため、数匹生き残ればあっという間に元の生息数に戻ってしまいます。
アメリカザリガニの巣穴は平均30cmから最大1mに達し、地下水を利用するなどして池干しを生き延びます。希少種がいるような自然度が高い場所では、周辺や池底が護岸されていませんから、根絶は絶望的です。希少種がいる場所では、薬剤も使えません。
それでは、希少種がいてなんとかしたい場合にはどうするか。増えるより早く取り続ける捕獲圧をかけて低密度管理します。例えば、かいぼりで水草が復活し“モネの池”と話題の井の頭公園では、200基の罠をかけて継続的に捕獲圧をかけています。根絶は難しいが低密度管理する、これが現在保全地域で目指せる目標です。
一方で、200基の罠をかけて毎週のように捕獲作業できる人員がいる場所・組織が何個あるでしょうか?これがアメリカザリガニの怖いところで、半永久的に人員が拘束されます。駆除をやめたら、ザリガニは元通りに増えます。希少種がいる所はまだマシで、シンボルになるような種がいなくて、人手が集まらないような湿地は、ひっそりアメリカザリガニに攻め滅ぼされています。
つまり、普通種はもちろん、希少種がいる場所にはアメリカザリガニを入れない。これが一番コストがかからない対策で、外来生物法「特定外来生物」指定で放流を禁止しよう、という話が出ている理由なのです。
アメリカザリガニに関するFAQ
- 「条件付特定外来生物」とは何ですか?
- 特定外来生物では、飼養・譲渡・輸入・放流等が禁止されます。外来生物法の一部改正により、一部の種について、政令で除外項目を設けられることになりました。アメリカザリガニやミドリガメでは、個人による飼育・無償譲渡が規制対象外になりました。
- アメリカザリガニ、今更規制しても意味がないのでは?
- アメリカザリガニがはどこにでもいるイメージですが、実際には日本各地に未侵入・未定着地域が残っています。例えば、固有種が多い南西諸島では、沖縄本島以外では未侵入あるいは一部定着のみとなっています。本州でも各地に未侵入地域があり、特定外来生物指定でこれらの地域の防衛に役立つことが期待されています。
- アメリカザリガニによる被害とは?
- ベッコウトンボやシャープゲンゴロウモドキなど、全国で数えるほどしか生息地がない絶滅危惧種の生息地にアメリカザリガニが侵入し、地域個体群が絶滅した事例が複数報告されています。つまり、アメリカザリガニは種を絶滅に追いやる直接的な脅威とみなされています。
- アメリカザリガニの飼育は禁止されますか?
- アメリカザリガニの飼育は禁止されません。ただし売買や放流などは禁止されます。安易に野外に放出しないようにしましょう。
- アメリカザリガニの売買は禁止されますか?
- 禁止されます。既存の「特定外来生物」制度でも輸入・売買は禁止事項です。売買OKにすると、アメリカザリガニ未侵入地域に売買で持ち込まれる原因になるからです。
- アメリカザリガニの飼育は禁止されますか?
- アメリカザリガニの飼育は禁止されません。ただし売買や放流などは禁止されます。アメリカザリガニは規制後も飼育できますので、早とちりして野外に放出しないようにしましょう。
- アメリカザリガニはいつから規制されますか?
- アメリカザリガニが条件付特定外来生物として法規制されるのは2023年6月から。2022年に外来生物法が一部法改正され、2023年から「条件付特定外来生物」の初指定種となります。
- アメリカザリガニは食べれば減りますか?
- 減りません。残念ながら、アメリカザリガニがうじゃうじゃいるような場所での駆除は徒労に終わる可能性が高いです。アメリカザリガニは根絶できる駆除方法が確立されておらず、取り逃しからすぐ元の個体数に戻ってしまいます。
- 外来種を駆除するとアメリカザリガニが増えてしまうのでは?
- 鯉やブラックバスがいなくなると、捕食者がいなくなったアメリカザリガニが激増してしまう事例が知られています。最初から考慮に入れればよいだけで、だから外来種対策しなくてよい、ということにはなりません。