ザリガニ釣り大会を企画・開催した小学生が受賞したニュースがありました。駆除したザリガニは肥料として活用したとのことです。外来種駆除について回る「食べて駆除」の課題と駆除個体の処分方法について。
ザリガニ釣り大会を開催した小学生がコンクールで受賞
花壇の肥料にした部分は余談で、小学生がイベントを企画・開催した運営力だけで受賞物かと思います。堆肥化は、外来種駆除において、一番ローコストな活用方法と言われています。よくメディアで取り上げられる「食べて駆除」は、単発イベントとしてはともかく、日常的な駆除で継続できるものではないからです。
子どもたちは盛岡城跡公園の池でトンボの減少や悪臭などが問題となっていることから、原因である外来種のアメリカザリガニを駆除しようと、おととしから年1回、ザリガニ釣り大会を開催してきました。
3回目の今年は315匹を駆除し、さらにザリガニを花壇の肥料に加工することで命の循環に繋げたということです。
この取り組みが、守りたい環境や創りたい未来について発表するためのプレゼン動画コンクール、「グリーン ブルー エデュケーション フォーラム(GBEF)コンクール」で、審査員特別賞の「長谷川ミラ賞」を受賞しました。
“ザリガニ釣り大会”で池を浄化 盛岡市の小中学生グループが環境保全活動を動画でプレゼン 「GBEFコンクール」で長谷川ミラ賞受賞 | IBC NEWS | IBC岩手放送
駆除個体の処分方法の選択肢と応用としての活用方法
生態系に大きな被害を与える特定外来生物。バスやザリガニであれば、1個体が在来種を何匹も食べるので、駆除自体が多くの命を救うことになります。したがって、目の前の駆除個体はかわいそうでも、数十数百倍の命を救うことになります。
一方、大規模な駆除をおこなう場合は、駆除個体の処分方法も事前に計画しておく必要があります。ここでは、国が出している「アメリカザリガニ対策の手引き」を元に、どういう処分が適切か見ていきましょう。
125ページある大作ですが、駆除個体の処分方法は効率的な防除の実施の章で一節設けられています。
第3章 効率的な防除の実施
3.2. 防除作業
(10)捕獲個体の処分方法(P117)
- 廃棄する場合
→ 土中に埋設する
→ ゴミとして廃棄する - 資源として有効活用する場合
→ 食材として調理する
→ 学習教材にする
→ 堆肥化する
アメリカザリガニは条件付特定外来生物なので、捕獲した個体をどう廃棄するか、あるいは資源として活用するかという話になります。具体的な禁止行為は以下の記事をご確認ください。
駆除したアメリカザリガニを「埋設処理」する
アメリカザリガニは逃げ出す可能性があるので、粉砕・加熱・冷凍など殺処分した上で、土中に埋設します。
駆除したアメリカザリガニを「ゴミとして廃棄」する
アメリカザリガニは逃げ出す可能性があるので、粉砕・加熱・冷凍など殺処分した上で、一般ゴミあるいは事業系ゴミとして廃棄します。行政や企業が駆除を行う場合は、事業系ゴミ扱いで廃棄費用がかかります。
駆除したアメリカザリガニを「食材として調理」する
アメリカザリガニは条件付特定外来生物ですが、駆除個体を調理することは合法です。病原体や寄生虫の可能性もあるので、生食せず必ず火は通しましょう。
中国ではこの10年ほどザリガニ料理ブームがあり、都内中華料理店でも麻辣炒めなどのメニューが提供されています。
しかし、ザリガニは不衛生な所にもいて、殻をむく必要があるのに可食部は多くありません。日本の食卓で日常的に食用にされることは考えづらく、駆除イベントとあわせて単発イベントとして企画するくらいが妥当でしょう。
駆除したアメリカザリガニを「学習教材」にする
通常の特定外来生物は生きたままの移動や飼育は禁止されていますが、アメリカザリガニは条件付特定外来生物で、自分で捕獲した個体を持ち帰って飼育することは合法です。
元々は、既存飼育個体が多く規制種指定による放流を防ぐ趣旨なので、終生飼育が前提となります。
教材として飼育することは可能ですが、侵略的外来種をあえて教材として終生飼育するメリットは、あまりないでしょう。
駆除したアメリカザリガニを「堆肥化」する
粉砕したアメリカザリガニを肥料や液肥として活用します。大量の個体を利用でき、また活用方法のなかで一番ローコストです。