解説:アメリカザリガニは2023年から「条件付特定外来生物」に!売買・放流禁止のほか、飼育・譲渡に除外規定を設ける法改正

アメリカザリガニ「特定外来生物」規制

2022年に外来生物法の一部改正が成立し、2023年からのアメリカザリガニとアカミミガメを「条件付特定外来生物」として規制する方針が確定しました。政令指定種に飼育・譲渡等の除外を設ける運用で、大枠としては「特定外来生物」として管理します。輸入・売買・放流等は禁止で、販売目的以外の飼育・無償譲渡は規制対象外とする「条件付特定外来生物」制度の新設です。

アメリカザリガニを法規制するためのハードル

アメリカザリガニは生態系に対する被害が大きく、長年法規制が検討されてきました。しかし、特定外来生物に指定すると大量の飼育個体が遺棄される懸念から、規制が見送られてきたものです。ここでは、議論の経緯と指定にあたってのハードルについて振り返ります。既に理解されている方は、飛ばしていただいてOKです。

侵略的外来種アメリカザリガニは、水草を切り餌が隠れられる場所をなくす環境改変能力を持ち、侵入した湿地では在来種の種類・個体数とも大幅に減少することが知られています。

こうした侵略的外来種を規制する法律・制度として、外来生物法「特定外来生物」があります。特定外来生物に指定された種では、以下の行為が禁止され、懲役または罰金の刑罰が課されます。

外来生物法で規制される事項(環境省)
外来生物法で規制される事項(環境省)

アメリカザリガニは、2020年時点で約65万世帯約540万個体が飼育されていると推定されています。特定外来生物では飼育・譲渡も禁止されるため、指定時にこれらが野外に遺棄される可能性が高く、法規制のハードルとなってきました。

長年見送られてきたのに、なぜ改めて規制する話になったのか。

全都道府県で確認されているアメリカザリガニですが、実際には日本各地に未侵入地域があり、そこでは在来種や希少種が生命をつないでいます。ところが、アメリカザリガニが希少種の生息地を壊滅させた事例が複数出てきて、これらの未侵入地域や希少種を守るには法規制するしかない、という議論になってきたのです。

アメリカザリガニとミシシッピアカミミガメを念頭に外来生物法を改正する話は、2021年から複数の報道が出るようになり、中央環境審議会が2022年1月11日に答申を出したことで決定的となりました。

アメリカザリガニの規制内容は?大枠は“特定外来生物”で飼育・譲渡の除外規定を設ける「条件付特定外来生物」制度の新設

アメリカザリガニの法規制にあたっては、飼育・譲渡等に除外を設ける「新たな規制の枠組み」が検討されていました。それには外来生物法の改正が必要で、2022年3月1日に改正法案が閣議決定されました。環境庁の資料を元に、アメリカザリガニの規制内容を見ていきましょう。

【概要】外来生物法を一部改正する法律案(環境省, 2022/03/01)

結論からいうと、特定外来生物に飼育・譲渡等を除外できる外来生物法の一部改正が成立しました。「条件付特定外来生物」では、その他は既存の特定外来生物と同じで輸入・販売・放流等は禁止されます。アメリカザリガニの特定外来生物規制が決まったと言ってよいでしょう。

種の保存法「特定第二種」のような新制度を設けないのは、アメリカザリガニとミシシッピアカミミガメためだけに新制度を設けるのは大げさであり、特定外来生物に例外を設ければよいという結論になったようです。

  • 例外的な数種のために新制度を創設しなくて良い
  • 規制内容を政令で指定でき、都度法改正しなくてよい

というメリットが考えられます。

現在、規制適用対象外として検討されている例には、以下が挙げられています。それ以外は、特定外来生物の規制事項がそのまま適用されると考えてOKです。

  • 個人の販売目的でない飼育
  • 個人間の無償譲渡

外来生物法の規制適用除外周りの規定

改正案を見ると、特定外来生物に関して「当分の間、これらの規定の全部又は一部を、政令で、当該規定ごとにその種類を指定して」という適用除外を設ける規定が入っています。マーカーは筆者による。

特定外来生物に係る規制の適用除外規定の整備

新たに特定外来生物となる外来生物について、我が国におけるその生息又は生育の状況、飼養等の状況その他の状況に鑑み、特定外来生物の飼養等、輸入、譲渡し等及び放出等の禁止に係る規定を適用することによりかえって当該特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、当該特定外来生物については、当分の間、これらの規定の全部又は一部を、政令で、当該規定ごとにその種類を指定して、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止のため必要な条件を付して適用しないこととすることができるものとすること。(原始附則第五条第一項関係)

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案要綱

アメリカザリガニは2023年には「条件付特定外来生物」として法規制される

アメリカザリガニは、特定外来生物指定時に大量の飼育個体が遺棄されることが懸念され法規制が見送られてきました。2022年3月1日に閣議決定された外来生物法一部改正案によれば、特定外来生物のうち、特定種に対し規制適用除外を認める規定が新設されます。つまり、アメリカザリガニとミシシッピアカミミガメは「特定外来生物」として規制されることが確定しました。

2 COMMENTS

K

千葉県、茨城県、埼玉県などで川の漁師さんたちが毎年餌用として年間何万匹も捕獲していますがそれが売買できなくなるその何万匹のアメリカザリガニが川に残り産卵してもっと生息数が増えて被害が増えると思います。無償で年間何万匹も駆除しているのになぜ餌用として販売させないのか理解出来ない。餌用として販売させて川の漁師達に取って貰ったほうが良いと思います。また、川の漁師達の収入(生活費)も確保されて生活保障問題も無くなり良いと思います。現在ショップで売られている赤、白、青などのザリガニが川や池にいるのを見た事が有りません。もしこのまま捕獲ができずに確実に増えるた場合の責任は重いと思います。

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管理人

「餌用として捕獲」と「無償で年間何万匹も駆除」が論理的につながっていない気がしますがそれはそれとして。

業としてやられている方はご存知だと思いますが、特定外来で禁止とされる販売・頒布の目的の飼養等であっても、許可者のみOKとされています。許可の目的は、学術研究、展示、教育、生業の維持等の目的に限られます。

「生業の維持」とは”生業の維持目的での許可は指定前から営まれていた業活動に限られる。”で、特定外来指定時に文字通り「生業の維持」のため従前から設けられている例外規定です。

アメリカザリガニの特定外来指定については、以前より指定要件を満たしていた所、侵入によって希少種生息地が壊滅し地域絶滅した事例が複数積み重なった結果です。

餌用も含め、パブコメで環境省から以下の回答出ていますので、ご確認ください。

“食用については、指定前から生業として販売や頒布を行っていた場合であれば、販売・頒布のための飼養等の許可をとって、飲食店(外来生物法施行規則第2条第18号に該当する者)に対して販売や頒布を行うことができます。飼育する生物の活きエサ用(釣りエサは含まない)についても、現在パブリックコメントを実施している外来生物法施行規則改正案において、届け出により購入可能とする方針としており、指定前から生業としてこうした販売を行っていた者が販売のための飼養等の許可をとっていれば、事前に生き餌の購入を届け出た者に対して販売を行うことができることとする予定です。”

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