ザリガニに感染する「ザリガニペスト」は、水カビの一種。日本にはアメリカザリガニと一緒に入ってきました。ニホンザリガニなど抵抗性がない種は短期間に高確率で死亡する恐ろしい病気です。アメリカザリガニとウチダザリガニはザリガニペストに抵抗性があるものの、ニホンザリガニの減少要因になりえます。
ザリガニペストとは
ザリガニペストは、ザリガニのみに感染する死亡率が高い病気です。学名Aphanomyces astaciのAphanomycesは、アファノマイセス菌と読みます。この仲間は苗の立枯れ病を引き起こしたり、魚類等にも発生しますが、その中でザリガニに発生するカビ菌がザリガニペストです。
ヨーロッパザリガニやニホンザリガニなど、抵抗性がない種で数週のうちに死亡し、海外では個体群が壊滅した事例も報告されています。そのため、保菌者となるウチダザリガニやアメリカザリガニの持ち込みが各国で規制される原因となっています。ザリガニペストの感染は初期は無症状なことが多く、死亡したことで初めて気づくことがあります。感染後期には、腹部の腹側の筋肉が白くなる症状が現れます。
ザリガニペストの感染拡大
アメリカザリガニとウチダザリガニはザリガニペストに抵抗性を持っています。病原菌に抵抗性を持っている種は、感染しても無症状だったりして、輸出入を通じて原産国から拡がっていく原因になります。
ヨーロッパでは、減少した在来種を補う水産資源として導入されたウチダザリガニがザリガニペストを拡げました。日本では、ウチダザリガニに加えウシガエルの餌として導入されたアメリカザリガニのせいです。
ザリガニの日本在来種は東北から北海道に生息するニホンザリガニです。清流の源流部に生息しますが、生息域的にはウチダザリガニとかぶるとされ、ザリガニペストによる減少が懸念されています。
世界中の両生類が死滅したカエルツボカビ症
ザリガニペストは海外からやってきた病原菌ですが、逆パターンと言えるのがカエルツボカビ病です。カエル、イモリ、サンショウウオなど両生類の体表に寄生する真菌であるカエルツボカビは、オーストラリアや中南米などの地域でカエル等の個体数を減少させるなど、世界中の両生類の減少要因になっています。
致死率90%以上と致死率が高く、伝播力が強い上、一回侵入するとほぼ撲滅できません。感染してもほとんど無症状なアフリカツメガエルやウシガエルが各地への感染源として疑われています。
日本でも2006年に感染したカエルが発見され、国が全国的な調査を行いました。その結果、カエルツボカビは日本各地に存在し、DNAの多様性から古くから存在していることがわかりました。カエルツボカビ病は東アジア起源で、日本の両生類は抵抗性を持っているので大量死が起きていないようです。